1. 前年度得られた桜島大気エアロゾルのX線吸収スペクトルが示す特異性の起源を明らかにするため、桜島周辺土壌、火山灰およびかんらん石に対して放射光によるXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)測定を試料電流および蛍光X線について同時に行った。測定は珪素のK吸収端付近で行い、Siの配位数によるX線吸収スペクトルの差異を観測し、前年度の結果と比較した。その結果、かんらん石のようにSiO@@S24@@E2の正四面体構造においてSiの一部が電気陰性度の低いMg等に置換された珪酸塩では、ケミカルシフトが起こり、大気エアロゾルの示すスペクトルの特異性を説明できるものであることがわかった。 2. 雲底下におけるガスおよびエアロゾル粒子洗浄過程を、雨滴の粒度分布、ガス吸収、液相平衡・酸化反応、多分散粒子の捕集機構を考慮した非定常詳細モデルにより定式化し、大気汚染物質濃度の雨水酸性化に及ぼす影響を定量的に検討した。その結果、地表面において、ガス状物質の除去に由来する雨水成分濃度は、降雨開始後2000sまでは増加しその後減少すること、粗大粒子の洗浄に起因する成分では、濃度が初期から単調に減少することがわかった。なお、雲底下洗浄における雨水酸性化への寄与は、ガス状物質と酸化剤、特に過酸化水素がほとんどであり、エアロゾルの寄与は極めてわずかであった。また、地表面における雨滴粒径別の成分濃度は、粒径の増加とともに単調に減少したが、粗大粒子の洗浄に由来するCa@@S12+@@E1濃度では、8000s経過後、0.3mmの雨滴径で濃度がピークを有する特徴的な結果が得られた。さらに、雲底での雨水pHが3.6のように雲内で酸性化が進行している場合、雲底下での酸性ガス洗浄による雨水pHの低下は起こらないことがわかった。
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