研究課題/領域番号 |
09680508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
井伊 博行 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (60283959)
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研究分担者 |
矢吹 貞代 理化学研究所, 表面解析室, 研究員
上田 晃 三菱マテリアル(株), 総合研究所, 室長
養父 志乃夫 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (00200569)
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キーワード | 環境同位体 / 硝酸 / 同位体 / 表層水 |
研究概要 |
本年度は野外調査と室内分析を中心に行った。調査地域は福岡県八女市(茶畑)、長野県松本市(りんご畑)、大阪府石川流域(ミカン畑と住宅地)であった。八女市の調査では、茶畑からの湧水には、肥料からの硝酸イオン、硫酸イオンなどの酸性物質と共にアルミニウムイオン、リンなどが多量に含まれていた。これが、池に入ると、特に、窒素、リンによる池の富栄養化に伴って起こる光合成によって池内で短期間に中和された。年間通じての硝酸イオンの池内での消失には、脱窒が貢献していた。中和によって湧水に含まれていたアルミニウムイオンは水酸化物として沈殿し、硫酸還元によって硫酸イオンも池から除去された。リンは生物(有機物)として池内に貯蔵された。松本市の調査では、農地や住宅地の浅層地下水は森林部の浅層地下水に比べて硝酸、塩素、ナトリウムイオン濃度が高かった。そのため、肥料や生活排水の影響が浅層地下水に影響を与えていることが判った。一方、深層地下水の硝酸イオン濃度は、脱窒によって減少したことが判った。また、農地や住宅地直下の深層地下水は、森林部直下の深層地下水に比べて、塩素、ナトリウムイオン濃度が高く、深層地下水の塩素、ナトリウムイオン濃度は地上の土地利用の違いによっても変化することが判った。石川流域の森林が分布する上流部では、降水の多くは直接流出せずに、地下に浸透してから流出することが酸素同位体比から推定され、降水量の変動によって水質は大きく変化しなかった。和泉層群が分布する河川水には、硫酸イオンが地層から供給されたことが硫黄の同位体比によって推定された。領家複合岩類が分布する森林地域では、土壌中の炭酸ガスと長石の反応をとおして、カルシウム、重炭酸イオンが供給され、水田・畑地では肥料によってカルシウム、重炭酸、硫酸、硝酸イオンが、住宅地では生活排水によって、さらに塩素、ナトリウムイオンが供給されたことが推定された。動態解析に必要な物質移行の解析については、簡単な解析を行い、その成果(塩分移動の解析)を、1997年9月にオーストラリアで行われた国際会議(Desert Technology IV)で発表した。
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