北欧や北米地域の融雪初期に酸性の融雪水が流出してくる現象、いわゆる酸性ショックが従来は注目されてきたが、この研究では、琵琶湖集水域の調査によって、融雪初期のみならず、雪結晶内部まで融雪が進む融雪後期にも、酸性ショックが発生していることが分かるとともに、またX線CTスキャン手法によって雪結晶内部の酸性物質の分布構造を明らかにした。しかしながら、結晶内の酸性物質が同心円的に分布するという当初考えていた単結晶モデルでは説明がつかないような複雑な構造を示したのであった。そこで、多結晶モデルの可能性を考えた実験的研究を本年度は行った。そのため、偏光板を用いたユニバーサル・ステージによるザラメ雪の結晶解析をくわえた結果、予期していたことではあるが、大部分のザラメ雪が多結晶によって構成されていることが明らかになった。そのことは、ザラメ雪結晶内部の酸性物質の分布構造が複雑化する要因にはなるが、本年度の研究によって明らかになったように、多結晶粒の境界が一般的に直線的であるのに対して、酸性物質の分布構造にはそのような直線的な分布が見られないのである。ここで新たなる課題がでてきた。その原因は来年度に考察したうえで、本研究の総合的な研究成果を公表していきたい。
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