研究課題/領域番号 |
09680511
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
蟻川 芳子 日本女子大学, 理学部, 教授 (00060666)
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研究分担者 |
今泉 幸子 日本女子大学, 理学部, 助手 (10247091)
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キーワード | 硫黄同位体比 / 硫化カルボニル(COS) / ジメチルスルフィド(DMS) / Tiobacillus thioparus / 赤潮 / 動態解析 / 過酸酸化反応 / 同位体分別 |
研究概要 |
環境における硫黄化合物の動態を解析するために、化石燃料の硫黄同位対比についてはすでに多くのデータを得てきたが、本研究ではCOSおよびDMSの硫黄同位体比特性を明らかにする計画であった。COSは微生物を用いて実験室的に生成し、基質として用いた硫黄化合物の同位体分別の程度を明らかにしたが、天然に発生するCOSを捕集し、同位体比測定をするには至らなかった。DMSについては赤潮原因藻による実験室的生成が不可能なため、海洋からのサンプリング法を検討し、実際に船上でサンプリングを行ったが、DMSを多量に発生するといわれる赤潮時に遭遇しなかったのと、期間が制限されているためDMSの捕集を行うことはできなかった。しかし、これらの経験は、本研究の基本的なステップとして評価できるものと思われる。 1.Tiobacillus thioparusによるCOSの実験室的生成条件の検討と同位体分別の考察 1mmol/lのチオシアン酸カリウムを基質として、Tiobacillus thioparusによるCOSの生成過程をチオシアン酸カリウムの減少を測定しながら追跡したところ、生成は6日間でほぼ終了した。微生物の代謝による同位体分別は約-3パミルであることが確認された。 2.DMSサンプリング法の検討とガスクロマトグラフィー(GC)による同定 DMSは海面大気からエアサンプラーによりエタノール中に捕集したのち、安定化学種に変換した。メタクロロ過安息香酸との過酸酸化反応によりジメチルスルホンとし、エタノールを蒸発させて結晶を得る。これをスズ(II)-強リン酸と280℃で加熱、硫化銀を経て、真空系で酸化銅(I)と加熱することにより二酸化硫黄を生成、同位体比測定に導く。また、ジメチルスルホンとしてGC測定でのリテンションタイムは13.25秒であった。なおDMSとジメチルスルホンとの間には、化学反応による同位体分別は起こらないことが確認できた。
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