研究概要 |
奥日光の白根山周辺においては以前のより深刻な森林被害が見られる。被害を受けている樹木は特定の樹種に限らず、ダケカンバ等の広葉樹も、オオシラビソ等の針葉樹も広範囲に被害を受けている。この原因が光化学オゾンや、これと植物が放出するテルペン類等の天然炭化水素の反応で生成する過酸化物に由来するのではないかと考え、実際に深刻な被害を受けている高山、亜高山地域でのオゾン濃度の測定を行った。また奥日光にある国立環境研究所奥日光環境観測所において過酸化物の測定を行った。山の上では一般の電源が利用できないため、電池で駆動できる、定電位電解セルを用いた小型オゾンセンサーを利用して山上でのオゾン観測を実施した。また、電池を用いて、短いインターバルでデータを記憶できる小型データロガーをデータの保存に用いた。 観測地点は標高2300m付近の山間部であり、当該地には無人の小屋しかないため、観測にあたっては、観測器材や食料を含め一切を人が担いで上がらなければならない。この点に関しては、3年間、自然保護に関心を持つボランティアーの方々の協力を得ることができた。 以上のように高山地帯での観測の条件を整えた上で、平成9,10,11年の8月初旬の約10日間、奥日光前白根山頂上直下の鞍部稜線上においてオゾン、気温、風速風向、湿度の測定を行った。9,10年度は悪天候で解析に足るデータが得られなかったが、11年度は90ppb程度の高濃度オゾンが観測された。同時に国立環境研究所奥日光環境観測所で行った観測では日中の過酸化水素とオゾンや日射、イソプレン濃度の間に良い相関が見られた。
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