研究概要 |
旧ソ連核実験場セミパラチンスク(カザフスタン)において,原爆実験からの放射性降下物の移動・沈降および人体影響を評価するために,1994年から1997年にかけて計5回現地を調査(国際学術研究)し,核実験場内およびその周辺居住地域から数多くの土壌およびレンガ(被曝線量評価)試料を採取してきた.本研究では,周辺居住地域の放射能汚染の実態把握を中心に,半減期の長い^<137>CsおよびPu(プルトニウム)同位体測定を実施した.測定の結果以下のことが明かになった.(1)^<137>Cs蓄積量は大部分の地点で1000-3000Bq/m^2(核実験場近傍のDolonの森林で5000-6000Bq/m^2)であり,国内のGlobalフォールアウトレベル(4000-7000Bq/m^2)と比べてかなり低い.(2)^<239,240>Puレベルは数10-数100Bq/m^2の範囲にあり,近傍のDolon,Mostik地区でやや高い(最高3900Bq/m^2で国内の平均50Bq/m^2の約80倍).(3)^<137>Cs,^<239,240>Puともに非常に不均一な分布で蓄積している.(4)表層下10cm深さまでにこれら核種の大部分が蓄積されており,鉱酸で抽出不可能なPuが数10%存在している.(5)Pu汚染源(セミパラチンス原爆とGlobalフォールアウト由来のPu)の識別に有効な^<240>Pu/^<239>Pu比については,0.024-0.125の値が見い出され,Globalフォールアウト由来のPuの^<240>Pu/^<239>Pu比0.18との比較から,採取地点で異なるが原爆級Puでかなり(50-100%)汚染されていることが分かった. 現在,今年度の調査も踏まえてさらに分析を継続しており,汚染の実態が明かになりつつある.
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