研究概要 |
旧ソ連セミパラチンスク核実験場周辺の残留放射能レベルと分布及び周辺住民の被曝線量を評価する目的で,これまでに核実験場内及び被曝線量が数100cSvと言われている近郊居住地域Dolon,Mostik,Chaganなど,更に被曝線量が少ないと言われているセミパラチンスク市内の土壌中の^<137>Cs,Pu同位体の汚染状況を調べてきた.今回は放射線の影響をより広範囲に評価するために,セミパラチンスク市から約200km東(実験場から約300km東)にあるウスチ・カメノゴルスク市(東カザフスタン州)周辺で採取した土壌の^<137>Cs,^<238>Pu,^<239,240>Pu汚染状況及び^<240>Pu/^<239>Pu同位体比を測定し,主としてこの地域のPu汚染由来を検討した. セミパラチンスク市からウスチ・カメノゴルスク市に通じる道路沿い及び市内の計19地点で表層(0-10cm,3-5試料/1地点)とコアー(0-30cm:表層から5cm毎に切断)土壌を採取した.放射性核種の測定には,非破壊g線スペクトロメトリー(^<137>Csなど),化学分離・a線スペクトロメトリー(^<238>Pu,^<239,240>Pu),化学分離・HR-ICP-MS(^<240>Pu/^<239>Pu比)を用いた. 測定結果として,市内の土壌中の^<137>Csおよび^<239,240>Pu蓄積量は,それぞれ1000-6000Bq/m^2(大部分1000-3000Bq/m^2)50-500Bq/m^2であり,前回調査したセミパラチンスク市周辺の蓄積量と比べて大差なかった.^<238>Pu/^<239,240>Pu/^<137>Cs放射能比は,0.03-0.05,0.02-0.08で対応するGlobal fallout比よりやや高い.この地域の土壌中の^<137>Csと^<239,240>Puの存在状態の知見を得るためにHNO_3+H_2O_2で加熱抽出を実施した結果,^<137>Csは90%以上抽出されたが,^<239,240>Puは50-80%で抽出不可能な成分がまだ存在することが分かった.研究はまだ継続しているが,おおまかな汚染状況を把握しつつある.
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