研究課題/領域番号 |
09680519
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
環境影響評価(含放射線生物学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
立花 章 京都大学, 放射線生物研究センター, 助手 (20188262)
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研究分担者 |
佐々木 正夫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (20013857)
江島 洋介 京都大学, 放射線生物研究センター, 助教授 (50127057)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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キーワード | 放射線適応応答 / DNA2本鎖切断修復 / 細胞内情報伝達 / p53遺伝子 / プロテインカイネースC / MAPカイネース / 非相同的組換え |
研究概要 |
細胞に予め低線量の放射線を照射すると、その後の高線量の放射線照射に対して抵抗性となる現象がヒトリンパ球で発見され、放射線適応応答と呼ばれている。放射線適応応答により,染色体異常や突然変異の頻度が減少し、致死効果も低減される。我々の研究室では、マウス2倍体細胞株m5Sを用いて放射線適応応答の検出系を確立した。まず、低線量放射線照射直後の細胞内情報伝達系の活性を検討したところ、低線量照射直後には、プロテインカイネースC(PKC)やp38MAPカイネース(MPAK)が非常に早期に反応し、しかもその反応がかなりの時間継続することが明らかになった。おのおののカイネースに対する阻害剤を用いた実験からPKCとp38MAPKはともに放射線適応応答の情報伝達に関与する重要な要因であることが明らかになった。また、これらのカイネースは相互作用をして、フィードバック制御をしていることも示唆された。一方、放射線適応応答の過程で、DNA2本鎖切断の修復がどのように行われているかを試験管内での再結合反応系を用いて解析したところ、放射線適応応答によってDNA2本鎖切断の再結合反応の効率と正確度が影響を受けることが明らかになった。すなわち、予め低線量の放射線を照射すると、照射しなかったときよりも再結合反応の効率が高く、また再結合の正確度も高かった。さらに、再結合の誤りを起こした場合でも、その際に生じるDNAの欠失範囲は、より小さかった。また、p53遺伝子を欠損したマウス細胞では、放射線適応応答は見られないが、試験管内再結合反応でも低線量放射線の前照射の影響は見られないことがわかった。このことは、p53遺伝子産物が放射線適応応答を制御する重要な因子であり、しかもDNA2本鎖切断の再結合反応を何らかの形で制御していることを示唆している。
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