本研究は昭和43年から45年に行った原爆被災復元調査により確認された78名の500m以内原爆被爆者を基軸にしての細胞遺伝学的ならびに分子生物学的研究を行ったものである。 本年度はWT1遺伝子異常検出のための資料蒐集とがん抑制遺伝子の欠損に関する実験を行った。 1.近距離原爆被爆者のWT1遺伝子検索用資料蒐集 500m以内原爆被爆者5名より末梢血10mlと採血し、リンパ球を分離後-80℃に保管した。症例が追加されたら測定に入る予定である。 2.がん抑制遺伝子の欠損に関する研究 昨年度までに染色体分析を行った高線量被爆者白血病24症例についてRB遺伝子、p53遺伝子BRCA遺伝子欠損の有無をFISH法で観察した。同時にMYC遺伝子およびp53遺伝子の増幅の有無も検討した。その結果、1Gy以上被爆白血病では染色体レベルでは観察されない微小欠損がこれらがん抑制遺伝子に有意に多く発生していることが判明した。
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