研究概要 |
酸素は生物の生存にとって不可欠な元素だが、同時にDNA、タンパク質、脂質などの生体高分子はその攻撃に曝されることになった。自然突然変異や発がん老化には反応性の高い活性酸素が原因の1つといわれる。本研究では、活性酸素の大量発生系のモデルとしてのラン藻における活性酸素誘発変異の特異性を明らかにすることを目的として、培養や遺伝子導入回収及び変異クローン収集の技術的開発検討、DNA修復能力の解析などをおこなった。また、あらかじめ活性酸素誘発変異の特徴を知る目的で、代表的酸素傷害である8-oxoGを特異的に生成するリボフラビン光増感反応誘発変異について検討した。 1.培養には通気が重要で、特に平板培地では密封しないで外科用サージカルテープが効果的である。2.ラシ藻大腸菌の双方で複製できるプラスミドpUC303での形質転換では対数期初期の細胞が効果的で、また抗生物質感受性が高くSm/Cmに対しては0.5-0.7μg/mlが区別できる濃度であった。3.変異検出用のプラスミドとしてpUC303に大腸菌crp遺伝子を組み込んだプラスミドpUCRPk6を作成し、ラン藻への導入安定性と回収率を調べたのち変異収集を試みたが、これについては形質転換効率改良の必要がある。4.野生型大腸菌に比べて短波長紫外線には10倍以上耐性であるが、,紫外線照射したpUCRPk6の宿主回復試験では大腸菌に比べて除去修復能力が小さい。DNA修復に関しては光回復の寄与が大きいものと考えられる。5.8-oxoGはAとミスマッチするのでGC→TA塩基置換が予想されたが、実際に高頻度で起こることを確認した。6.野生型mutM変異株では他にGC→CGがみられたmutY株では皆無であったが、光増感後時間をおくとmutY株でGC→CGが増えることから、経時的酸化反応で未知傷害が増えそれがMutYタンパクの基質になりうることが示唆された。
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