いくつかの突然変異したp53遺伝子を人工的に作成し、Saos-2細胞(p53遺伝子が欠失している骨肉腫細胞)に導入した。また、コントロールとして正常p53遺伝子をLacSwitchの系を用いて細胞に導入した。これらのp53遺伝子導入細胞の放射線感受性を測定したところ、正常p53遺伝子導入細胞では、放射線感受性が高くなった。また、143A、175H、273H変異細胞では、放射線抵抗性であったが、123A変異細胞では、放射線感受性が高くなった。このことより、p53遺伝子の変異部位によって放射線感受性が異なることが分かった。また、放射線に感受性であった正常p53細胞と123A変異細胞では、放射線照射後のアポトーシスの誘導が観察されたが、放射線に抵抗性であった143A、175H、273H変異細胞では見られなかった。さらに、ウエスタンブロット法でp53を調べると、正常p53細胞と123A変異細胞において放射線によるp53の蓄積が見られが、143A、175H、273H変異細胞では、放射線によるp53の蓄積が見られなかった。そこで、正常p53細胞と123A変異細胞で、Waf-1の誘導を調べたところ正常p53細胞ではWaf-1の誘導が観察されたが、123A変異細胞では見られなかった。また、123A変異細胞では、G1停止が見られなかった。しかし、BaxとMDM2の誘導とBcl-2の減少は正常p53細胞と123A変異細胞共に観察された。また123A変異細胞ではアポトーシスが早期に起こったがこの時期に対応してFasの誘導が見られた。このことより、Waf-1はFasの誘導を制御しているのではないかと考えられた。
|