紫外線誘発DNA損傷であるシクロブタン型ダイマー(CPD)や(6-4)型ダイマー(6-4PP)はヒトにおいてヌクレオチド除去修復機構で修復される。約30種類の修復蛋白の一連の関与が試験管内反応系を用いて確認されているが、実際の修復の場である細胞核では、DNAは複製や遺伝子発現のために各種蛋白やRNAと相互作用しつつ自らの三次元構造を絶えず変化させていることから、同じDNA損傷であってもその修復反応は一細胞核内でも一律ではないことが考えられる。本実験では、DNA損傷特異モノクローナル抗体と共焦点レーザー顕微鏡を併用し、DNA損傷部位やその修復部位を個々の細胞において三次元的に可視化することにより、2種類のDNA損傷が細胞核内で均一に修復されるかについて検討した。 正常細胞はCPDを24時間で50%、6-4PPを3時間で90%修復したのに対し、色素性乾皮症由来(XP-C)細胞はほとんど修復できなかった。また、正常細胞は主に6-4PPの修復を反映する照射後3時間までの効率の良い修復DNA合成(UDS)と、主にCPDの修復を反映するそれ以後の効率の悪いUDSを示した。個々の正常細胞において、2種類のDNA損傷およびUDSの3次元表示に成功し、上述の修復動態を良く反映する事を確認した。興味あることに、照射2時問後、未修復6-4PPは細胞核内でドット状に残存していた。類似して、照射後0-3時間および3-6時間のUDSは共に細胞核内でドット状に現れた。一方、XP-C細胞では個々の細胞においてもUDSはほとんど検出できなかった。これらの結果より、細胞核内に一様に誘発されたCPDと6-4PPは、ともに正常ヒト細胞の核内で不均一に除去修復されることが明らかになった。また、特定のDNA損傷の3次元表示に成功したことから、今後修復酵素の所在と関連付ける研究が可能となった。
|