紫外線誘発DNA損傷であるシクロブタン型ダイマーや(6-4)型ダイマーはヒトにおいてはヌクレオチド除去修復機構によって修復される。平成9年度の研究において、DNA損傷特異抗体や抗BrdU抗体を共焦点レーザー顕微鏡法に応用し、DNA修復を細胞レベルで検討した結果、2種の損傷は共に細胞核内に均等に誘発されるものの、修復は核内で不均一に進行することが明らかになった。そこで平成10年度は、DNA損傷の核内不均一修復の機構を解明すべく、紫外線照射前、照射直後および修復後の各時点におけるヌクレオチド除去修復酵素の細胞内分布について、酵素特異抗体を用いた共焦点レーザー顕微鏡法により検討した。 DNA損傷の認識に関与するXPCは細胞核のほぼ全面にドットをまじえて存在した。損傷近傍の2本鎖DNAの部分解離に関与するXPBは大きめの数十個のドットとして細胞核に存在した。また、損傷の3'側のDNA鎖切断に関与するXPGは20-50個の明確なドットとして細胞核全体に分布した。ERCC1と結合して損傷の5'側のDNA鎖切断に関与するXPFは細胞核全面に分布した。これらの4種類の修復酵素は、紫外線照射および修復に伴う明確な変化は見られなかった。一方、DNA損傷除去後に生じるギャップ部位の修復DNA合成に関与するPCNAはDNA合成(S)期の細胞核内で免疫染色されるが、S期以外の細胞核では染色されなかった。興味あることには、紫外線照射後30分でS期以外の細胞核でも免疫染色されるようになり、PCNAが紫外線照射に反応する修復酵素であることが明らかとなった。現在、PCNAとDNA損傷の細胞核内分布が一致するかどうか、各修復酵素間で細胞核内分布が一致するかどうかについて検討を進めている。
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