研究概要 |
本研究は、オゾンホールの形成に伴う紫外線、特にUVB(波長290-320nm)の増加によるイネに対する影響を評価するための基礎的研究を目的とする。今年度(平成9年)は、紫外線耐性株と感受性株のイネに対する照射紫外線量とDNA損傷の関係を数量的に明らかにすると共に、これらの株における光回復能と除去修復能について調べた。用いたイネの栽培種として、紫外線耐性株はOryza sativa L.cv.Marich-bati(略名:SC-6)で、感受性株はOryza sativa L.cv.Surjamkhi(略名:Sur.)である。照射紫外線量とDNA損傷量とは直接関係にあり、興味深いことに抵抗性株と感受性株間でのDNA損傷量差はほとんどなかった。即ち、UVB照射量が50、75J/m^2時のDNA損傷量は両株ともそれぞれ約70,100CPD/Mbでほとんど同じであった。そこで、紫外線抵抗性株と感受性株の差がどの様な因子で左右されているのかについてさらに調べるため、両株について紫外線75J/m^2照射15分後の光回復能ならびに除去修復能を調べたところ、抵抗性のSC-6株では光回復で約75%のDNA損傷が修復され、感受性のSur.株ではDNA損傷量の約25%しか光回復されていなかった。同様に除去修復能についても調べたところ、SC-6株では約30%が修復されるが、Sur.株ではほとんど修復されていなかった。これらの結果から、紫外線抵抗性は、DNAの損傷量の違いではなく、その修復能力に起因することが強く示唆されるという興味ある結果が得られた。
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