周辺住民の高発がん死亡率が指摘されているバッチ式ごみ焼却施設を中心として2kmの範囲において、放射状に5方向のラインと発がん死亡率の高い地域を横切る1ライン、計6ライン上の60地点から採取した土壌試料について、高毒性のダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン、コプラナーPCB)の汚染を調べた。その結果、年間を通して施設の風下側になるラインの平均実測濃度は14000pg/g乾燥重量(5300〜32000pg/g)、TEQ濃度は74pgTEQ/g(14〜250pgTEQ/g)であり、風上側のラインの実測濃度の5000pg/g(1300〜23000pg/g)、TEQ濃度の9.7pgTEQ/g(4.5〜17pgTEQ/g)に較べて明らかに高い汚染が認められ、汚染状況は気象条件に大きく影響されることが判明した。さらに、土壌試料および焼却施設の貯水槽やその周辺河川から採取した底質について詳細にダイオキシン類組成を解析した結果、周辺地域の土壌汚染は焼却施設の排ガス経由でもたらされたことが明らかとなった。一方、高発がん性の多核芳香族炭化水素類についても調査した結果、ダイオキシン類と同様な汚染傾向が認められた。 本研究で対象とした高発がん死亡率の地域は年間を通して施設の風下に位置し、結果として施設の排ガス経由でダイオキシン類や多核芳香族炭化水素類に高濃度汚染を受けていたことが明らかとなり、次年度に予定している血液検査により人体汚染評価をすることが、極めて重要であるとの知見に至った。
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