本研究は、茨城県新利根村にあるバッチ式一般固形廃棄物焼却場(城取清掃工場)周辺に高発ガン死亡率(42.1%)を示す地域が存在することに着目し、その焼却場周辺(半径2km以内)のダイオキシン類による環境(土壌)および人体(血液)汚染実態の究明を試みたものである。その結果、焼却場から1.1km以上離れた地域の土壌中ダイオキシン類濃度は21pgTEQ/g(18検体平均)であったのに対して、焼却場から1.1km以内の高発ガン率地域の濃度は、52pgTEQ/g(14検体平均)の重度の汚染が観察された。特に、半径500m以内の風下側の地域の濃度は230pgTEQ/g(2検体平均)と極めて重度な汚染が観察された。 次に、焼却場施設周辺住民34人の血液試料中のダイオキシン類(PCDDs/DFs)の分析を試みた結果、平均で76.5pgTEQ/g(lipid base)が検出された。この値は、諸外国の健常者の血中濃度が15〜30pgTEQ/gであることを考慮すると、この焼却場周辺住民は、通常の2〜5倍の人体汚染を受けていることが判明した。さらに詳細なデータ解析を行ったところ男性22人の平均値は67.9pgTEQ/g、女性12人の平均値は85.1 pgTEQ/gとなり、女性の場合の方が高濃度のダイオキシン類を血液中に蓄積していることが明らかとなった。 以上、本研究により、焼却場周辺地域の環境および住民がダイオキシン類によって重度に汚染されていることが明らかになるとともに、将来にわたってこの地域住民の健康毒性影響が懸念された。
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