有害大気汚染物質による健康リスクを評価するのには個人暴露量を直接測定してリスクを計算するのが望ましい。個人暴露量を測定する場合、拡散方式の捕集管は調査対象者に協力してもらいやすく、経済的でもあり、沢山のサンプル数が得られ統計的にも意味ある値が得られる。そこで我々はつくばや東京の住民の協力で24時間捕集管を携帯してもらい1996-1998年に4回ほど個人暴露量調査を行った。そのうち2回は個人暴露量と同時にその人が一番長い時間過ごす居間か寝室の室内空気の測定も行った。 これらの調査から、つくばと東京の住民の個人暴露濃度の違い、個人暴露濃度と一般大気環境濃度の違い、個人暴露濃度と室内空気濃度の関係が物質により異なる傾向を示す事を見いだした。その結果測定対象物質18種類をいくつかの物質群に分けることができた。 第1群の物質は個人暴露濃度と室内空気濃度を同時に測定すると、個人暴露濃度と室内空気濃度が調査地域の人々で大体同じ値になり、かつ個人暴露濃度と室内空気濃度が同じである四塩化炭素やベンゼンであり、これらは都市大気汚染が発生源であった(ある)物質である。第2群としては室内空気濃度が個人暴露濃度より高く、発生源が室内にあるp-ジクロロベンゼンなど。第3群は溶剤や水道水シャワー、ドライクリーニングしたばかりの洋服など身近で扱う事で個人暴露濃度が非常に高くなっている物質でキシレン、クロロホルム、テトラクロコエチレンなどである。これをまとめると、個人暴露濃度が一般環境大気濃度より高くなっている物質数は測定物質の70-80%もあり、室内空気の影響が非常に大きい事を示した。
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