S期特異的に発現する新規核蛋白質NP95のcDNAクローンを分離した。この遺伝子産物は、95kDaの分子量を持ち、放射線発がん高発系Bl0系マウスでは前がん細胞の発生する時期に高発現することや、リンパ腫では細胞周期によらず異常発現する。また抗Np95(Th-10a mAb)をFITC標識し、抗PCNA(PC10)をTexas Redで標識して、m5S細胞を二重染色して解析したところ、G1期及びS期において核内でNp95とPCNAの局在が、ドット状に一致して分布していることが示された。前年度において、ES細胞にNp95の遺伝子のターゲツテングベクターを組み込むことに成功し、さらにネオマイシンの濃度を上げることによって、もう一方の対立遺伝子のNp95遺伝子も欠損している細胞株ES.Np95-/-を作成することが出来た。これらの細胞について、放射線に対する応答性を調べたところ、Np95遺伝子欠損細胞は、放射線感受性であることが、明らかになった。 平成11年度においては、これらの細胞のUV及びアルキル化剤(MNNG)に対する反応性を調べたところ、Np95遺伝子欠損細胞は、UV及びアルキル化剤(MNNG)に対して、同様に感受性を示した。さらにNp95遺伝子の機能を解析するために、Np95遺伝子のヒト・ホモログの分離を行い、それの核蛋白に対する抗体を得ることを、計画した。現在までに、人の精巣のcDNAライブラリーから、Two-StepPCR法を使用して、いくつかのcDNAクローンを分離出来、解析するとisoformがいくつか存在している事が明らかになった。今後は、Np95遺伝子欠損細胞と正常細胞との間で、DNA修復、複製あるいは細胞周期に関して、どの様な違いがあるのかを明らかにする。さらに遺伝子発現プロフィールの手法を使用して、Np95遺伝子の機能解析を行う。
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