研究概要 |
肺がんと室内ラドン曝露との関連を検討するために、三朝町において病例対照研究を実施した。1976年1月1日における満40歳以上の鳥取県三朝町全住民4,331名を対象集団とした。1976年1月1日より1996年5月31日までの肺がん死亡例63例を死亡票より把握し、51例について三朝町内在住の遺族を確認した。このうち、30例より室内ラドン測定の同意を得た。上記対象集団より、病例と性・年齢をマッチし、対応する病例の肺がん死亡日に生存していた者を肺がん病例1例につき5例ずつ選択し、36例の対照より室内ラドン測定の同意を得た。室内ラドンは、「ラドトラック(長瀬ランダウア社)」による測定を1年間(半年間を2回)行った。調整オッズ比の推定にはMantel-Haenszel法を用いた。 室内ラドン測定を1年間完了できた病例28例(2例は1回目半年間の測定後拒否)、対照36例についての平均室内ラドン濃度は、それぞれ、45.6Bq/m^3、50.6Bp/m^3であった。男(病例26例、対照32例)について、年齢および喫煙状況を調整し、室内ラドン濃度0-24Bq/m^3を1とした場合の、25-49Bq/m^3、50-99Bq/m^3、100Bq/m^3以上の肺がんオッズ比は、0.93(95%信頼区間0.21-4.04)、1.33(0.06-32.6)、0.43(0.04-4.82)となった。 室内ラドンと肺がんについての病例対照研究は、欧米諸国および中国においてこれまで実施されている。それらを総括したメタアナリシスの結果、室内ラドン濃度150Bq/m^3でのオッズ比は1.14と推定され、この程度の大きさのリスクでも社会的影響が大きいため今後とも検討する必要があるとしている。本研究の結果は、病例数が少ないために推定オッズ比の信頼区間が広く、これを肯定も否定もできなかった。
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