研究課題/領域番号 |
09680544
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
沈 利星 筑波大学, 応用生物化学系, 講師 (30272157)
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研究分担者 |
臼井 健二 筑波大学, 応用生物化学系, 教授 (80087585)
小林 勝一郎 筑波大学, 応用生物化学系, 助教授 (40087606)
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キーワード | 植物ストレス / 抵抗性の強化 / 植物の耐塩性機構 / Inabenfide / Uniconazole / 植物種間差 / 活性酸素消去系酵素 / カタラーゼ |
研究概要 |
植物の様々なストレスに対する抵抗性は遺伝子により支配される性質であるが、その性質の発現には植物の大きさまたは生育段階などの要因と置かれている環境要因により決まることがある。それは本来植物体内に存在している遺伝子がそのような植物において活性化され、植物の代謝を営む酵素や物質が誘導されるからであるとしている。この研究は化学物質により人工的にストレス抵抗性関連する遺伝子の発現を強化させようとするのを目的にしている。今年度にはストレス抵抗性強化効果を持つinabenfideの塩ストレス抵抗性強化機構を明らかにするとともに植物の塩ストレス抵抗性機構についてさらに研究を進め、植物ストレス抵抗性の制御のための知見を集めようとした。 1) Inabenf1deによる植物塩ストレス抵抗性強化の機構:塩ストレス条件下のイネにおいては活性酸素の発生が多くなり、この活性酸素をうまく消去できなった場合に膜の過酸化、葉緑素の破壊と機能の喪失、葉の枯死など起こるが、特に活性酸素消去系の酵素であるカタラーゼの活性の低下が大きな要因とされる。Inabenfideやuniconazoleによる塩ストレス抵抗性の強化はこれらの薬剤がカタラーゼの塩ストレス条件下での低下を回避させるがあるいは新しい分子種を誘導すからであると結論した。しかし、どのようなメカニズムによるのかについては植物体内のサリチル酸の生成やbezoate 2-hydroxylaseなどの酵素を追跡しながら研究を続けている。 2) 植物の塩ストレス抵抗性機構と種または品種間差:イネ科植物においては塩ストレス条件で植物に有害なNaの吸収や地上部への移行の量が多い植物で塩ストレスによる障害が大きく現われるが、このような傾向はカヤツリグサ科植物においても同じく観察されてこれらの植物の塩ストレスを強化するためにはNaの吸収と移行に関連する酵素を制御する必要があるとされた。また、イネの品種間における塩ストレス抵抗性程度とカタラーゼ活性の低下とは相関関係が認められイネの塩ストレス抵抗性の強化にはこの酵素を遺伝的または化学的に調節するのがのぞましいと考えられた。 これらの結果の一部はまとめて熱帯農業学会誌と雑草学会誌などに投稿中である。
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