研究概要 |
残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants,POPs)は残留性、生物蓄積性、揮散性、毒性の4特徴を有する有機汚染物質として、近年定義され、グローバルアクションの必要な環境汚染物質となりつつある。多くのPOPs、およびPOPs混合物に対する急性、慢性暴露の結果、発がん性、免疫系への影響、生殖系への影響などをもたらすことが明らかとなっている。本研究は、廃棄物に含有されるPOPsの実態と、その溶出挙動について検討を加えるものである。具体的には、廃車や廃家電製品の破砕リサイクル残渣であるシュレッダーダストに含有されるPCB、ダイオキシン類の溶出挙動解析として、とくにPCBの溶出影響因子に関する実験的検討を行った。 シュレッダーダストの中には、最大で24mg/kgのPCBが検出され、ppmオーダーでのPCBの存在が示された。そして、シュレッダーダストにフミン酸や界面活性剤である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)が共存することにより、PCBの溶出濃度が上昇した。とくに、LAS1,000ppmを溶出溶媒とした試験では、蒸留水を溶媒としたときの70倍近い溶出濃度の増加が認められた。溶出試験における固液分離法による違いもみられた。すなわち、遠心分離の場合のPCB溶出濃度は19μg/Lとろ紙分離の場合の5.7μg/Lより高くなり、一方、両者のPCB同族体分布はほとんど違いがみられなかった。遠心分離による溶出液の粒径は<0.45μmであるのに対し、ろ紙分離による溶出液は<0.08μmであり、溶出液の粒子状物質の粒径分布が溶出性に影響を与える因子の一つであることがわかった。
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