環境保全と経済活動の観点から循環型都市の建設を目指す地方自治体の環境管理政策を地域公共財の観点から研究する。東京都のごみ処理問題を具体的事例として考察する。 1.都市廃棄物(ごみ)の現状把握: (1)東京都のごみデータ、マクロ経済活動データなどを収集し、更に主要政令指定都市、主要先進諸国(OECD諸国)との比較も行った。廃棄物の定義は国ごとに異なるが、日本の法律では事業系廃棄物のうち19種類を産業廃棄物とし、排出者自身が処理責任者である。これ以外は家庭からの廃棄物とあわせて「ごみ」とし、自治体がその処理責任者である。この規定では都市ごみ(生活系ごみ)は実態よりも多く逆に産業廃棄物(事業系廃棄物)は実態よりも少なく示される。ところが主要先進諸国の廃棄物の総排出量をみると、日本の産業廃棄物は都市ごみの6.5倍であり、OECD平均は3.4倍である。また単位当たり排出量でも、日本の都市ごみはヨーロッパ並で少ないが、産業廃棄物はアメリカとほぼ同様であり、OECD平均の約1.4倍である。事業系廃棄物の一部が産業廃棄物に含まれていないことを考えるとデータと実態とにズレがある。 (2)主要都市の一人当たりごみ排出量を比較すると、札幌、東京都区部、大阪、福岡が平均値以上である。これらの都市のデータを収集主体別にみると東京都区部の直接収集ごみは他の都市と比較してかなり多い。 2.経済活動とごみ排出量の関連の分析: 東京都区部の事業系ごみは96年12月から有料化が実施されている。手数料有料化の効果としては排出抑制が考えられる。この分析のため過去5年間の排出量データを月次で収集した。有料化以前と比較すると全体のごみ量は減少しているが、内訳では事業者、あるいは委託を受けた処理業者が直接清掃工場に持ち込むごみが増加し、清掃局が収集するごみが減少している。
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