1. 本研究は、下水道の普及に伴う汚泥処分問題に対応できる排水処理技術として、活性汚泥法の曝気槽に微小高等動物の付着生息場となる「芯入り紐状担体」を組み込み、原生動物や微小後生動物などによる汚泥の捕食作用を活用することにより、汚泥の引き抜きの不要な新しい活性汚泥法の開発と確立を目的とする。 2. 実験室に4段反応槽と沈殿槽から成るベンチスケールの装置を設置し、人工排水により主として流入TOC負荷を変化させて長期間の運転実験を行い、TOC除去性能、反応槽内の汚泥量の状況、窒素除去性能、さらには原生動物や微小後生動物などの動態を検討した。 3. その結果、本研究において次のようなことが解明された。 (1)汚泥を引き抜かない運転によっても流入TOC負荷0.36〜2.3gTOC/1・日の範囲でTOC除去率約97%に達するものであった。汚泥の流出による影響はSRTとして110日程度となり無視しうる程度であった。(2)反応槽内における汚泥量(MLSS濃度)の決定機構に関して動力学的考察を行い、実験結果から各種係数値を算定し、本プロセス設計に関わる基礎的知見を得た。(3)原生動物や微小後生動物などの汚泥の捕食、さらに汚泥の自己分解によると見られる窒素成分の溶出が認められた。しかし、本システムでは硝化、脱窒がほぼ完全に進行しており、処理水窒素濃度の上昇を抑制する機能が認められた。 以上を要するに、活性汚泥法の新しい運転法として、TOC除去に伴う汚泥の増殖と、汚泥の自己分解並びに原生動物や微小後生動物の汚泥捕食作用を平衡させる限界増殖領域運転法に関する基礎的知見が得られた。
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