大気環境モニタリングの新構築に関する研究を4年間にわたり実施した。総論として都市を中心とした地域における大気環境モニタリングの目的や意義、これまでの経緯と現状、問題点、課題を明らかにした。各論として、関東、関西を中心とした地域における実際の大気環境モニタリングデータのトレンド解析、室内実験、野外観測、モデル解析等を基に現状の把握を行った。以上を踏まえ今後の課題を展望し報告書を取りまとめた。 具体的な成果は、まず大気汚染の過去30年間におけるトレンド解析を実施した。解析の結果、都心地域に比べて郊外地域において大気汚染濃度が総体的に上昇している事、これと共にオキシダントの年平均濃度が上昇している事、オキシダント濃度の出現頻度分布を見ると高濃度域と低濃度域の出現頻度が減少しているのに対し、40-60ppb程度の中濃度領域の出現頻度が増加している事などが明らかとなった。非汚染地域である国設松江のデータ解析によれば、経年的なオキシダントの上昇と湿性降下物量の増加が認められ、中国大陸を含む広域的なモニタリングの必要性が明らかとなった。大気汚染測定項目としては、これまであまり情報が蓄積されていない炭化水素成分の環境動態を明らかにするために、自動モニタリングシステムの開発と利用に関する研究を行った。更に、関東地域とメキシコ市において連続観測を実施し、地域的な特徴を比較評価した。解析の結果、メキシコ市における炭化水素成分濃度は関東地域と比べて高く、中でもプロパン、プロピレン、ブタンの濃度は10〜30倍程度、アセチレンの濃度は10倍程度であり、メキシコにおける、LPGの寄与や自動車の寄与の推定に本システムが有用である事を示した。また、現在最も重要な大気汚染物質として認識されている大気中微小粒子状物質の発生源特性や環境動態モニタリングに関しての課題を整理し今後の研究課題を明らかにした。
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