研究課題/領域番号 |
09680560
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立環境研究所 |
研究代表者 |
高村 典子 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 総合研究官 (80132843)
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研究分担者 |
三上 一 青森県環境保健センター, 公害部, 総括主任研究員
上野 隆平 国立環境研究所, 生物圏環境部, 主任研究員 (60168648)
高村 健二 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員 (40163315)
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キーワード | 湖 / 生態系 / 相互作用 / 沿岸域 / ヒメマス / ワカサギ / ダフニア / トップダウン |
研究概要 |
1978年から1995年までの十和田湖のヒメマス、ワカサギの漁獲量、各種動物プランクトン種の出現密度透明度の年平均値を用いて主成分分析を行ったところ、第一主成分は、ヒメマスとワカサギそれぞれの食性に関する因子と考えられ、全体の39.5%を説明し、ヒメマスの漁獲量、ヒメマス雌の体重、枝角類のDaphnia longispinaの密度、カイアシ類のAcanthodiaptomus pacificusの密度、その幼生の密度、および透明度が高い値を示した。一方、ワカサギの漁獲量、枝角類のBosminalongirostrisや輪虫類のKeratella quadrataやFilinia terminalisの密度が低い値を示した。第2主成分は漁獲に関する因子と考えられ、全体の20.9%を説明した。総漁獲量とワカサギの漁獲量が高い値を示した。以上のことから、十和田湖ではヒメマスの漁獲が高いと大型の動物プランクトンが多く出現し、高い透明度を示すが、ワカサギの漁獲が高い年には、小型の動物プランクトンが優占し、結果的に透明度が低下する傾向を示していることが明らかとなったDaphniaは利用できる餌のサイズの幅が広く、かつ、濾食速度が早い。また、A.pacificusは日本列島を中心とし分布する種で、5-40μmの比較的大型のサイズの植物プランクトン、輪虫、原生動物を食べており欧州産のA.denticornisに類似していると考えると濾食効率はDaphnia同様高いと考えて良い。従って、1984年までの十和田湖の沖の生態系は十和田湖の植物プランクトンのほとんどがDaphniaとAcanthodiaptomusにより効率よく摂食され、それがヒメマスへと効率よく転換していたと考えられる。一方、Bosminaや輪虫類は利用できる餌のサイズの幅が狭く、摂食効率も悪いことが知られている。そのため湖水中に食べられないで残る植物プランクトンが増え、結果として湖水の透明度が低下したと考えられた。
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