研究概要 |
ミクロネシア産海綿より単離された新規アミノ酸ダイシハーベインは、新しいnon-NMDA型グルタミン酸受容体の選択的なアゴニストであることが示唆されている。その構造は、分子内にグルタミン酸の部分構造を含む前例のないシス縮環した二環性エーテル骨格からなる。本研究では、ダイシハーベインの全合成による量的供給と絶対構造の決定を行い、その詳細な神経活性を調べることを目的とした。 本年度は、ダイシハーベインおよびその構造類縁体の一般的合成法の開発を目指し、6員環エーテル上の水酸基とメチルアミノ基を省略したモデル化合物の合成と生物活性評価を行った。トリ-O-アセチル-D-グルカールを出発原料とし、エポキシアルコールの5-exo選択的な分子内環化反応によりシス縮環した2環性エーテル骨格を合成し、エステル誘導体へと変換した。このエステルエノレートに対して、D-セリン由来のGarnerアルデヒドを縮合させ、アミノ酸側鎖の導入を行い、2種類のジアステレオマーを得た。これらを分離後、生成した水酸基をBarton法により還元し、官能基変換を行って、目的とするダイシハーベインモデル化合物(A)とそのジアステレオマー(B)を合成した。 合成したモデル化合物A,Bの生物活性評価をマウスに対する毒性により行ったところ、化合物Aの脳室内注射により、マウスは激しい発作を引き起したのち昏睡状態になり、約1日後には回復するという興味深い結果が得られたのに対して、4級炭素部分に関する非天然型化合物Bにはマウスに対する顕著な作用は見られなかった。
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