平成10年度は、平成9年度に引き続いて固相担体上でのペプチドライブラリーの作成とクロスリンク基の導入を行った後、実際に提案した方法論の検証を実施した。当初の計画に従ってクロスリンク基として光活性化できるタイプのものをまず検討した。ペプチド自動合成の最終工程に於いて各ペプチドのN末端に光クロスリンク基としてアリールアジドを導入し、固相担体から切り出した。ライブラリーとしては、約20個程度の極小スケールものを検討した。アジド基の導入は、ライブラリーから少量の試料を取り出し、分光法により確認した。ターゲットとするDNAオリゴマーと混合し、光照射した。DNAをエタノール沈殿により回収し、非結合オリゴペプチドを除去し、得られた「オリゴペプチド-DNA複合体」を加水素分解を用いて、光クロスリンク基とオリゴペプチドのN末端の間で切断した。再度エタノール沈殿を行い、遊離したオリゴペプチドを回収してHPLCで分析した。しがしながら、DNAに強く結合するペプチドによるポジティブコントロールが無いために、実験の結果を正確に評価することが出来ないことが明らかとなった。 以上2年間の研究結果を総括すると、1)光反応を用いた場合、反応をクロスリンクにだけ特定することが困難であり副反応によるノイズを除去できない、2)その結果クロスリンクの効率が十分でなく、ペプチドがDNAに極めて強く結合している場合を除いてクロスリンクが認めにくいことが判明した。今後クロスリンク基としてアルキル化や、遷移金属触媒を用いた反応等を検索し、本法の有効性を実証する予定である。
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