天然のb-ZIPタンパク質GCN4の中のLeucine Zipper部分をβ-シクロデキストリンとアダマンタンという、1:1のホストーゲスト錯体を形成する分子に置き換えることによりえられるG23AdとG23Cdペプチドは、ホモダイマーを形成して、天然のGCN4のDNA塩基配列であるCREを認識する。また、ホスト分子とゲスト分子に、異なったペプチドを組み合わせることにより、選択的にヘテロダイマーを形成することができる。本年度の研究では、ペプチドにDNA切断分子としてp-ベンゾイルフェニルアラニン(Bpa)を導入し、非回文配列に結合した状態でのペプチドヘテロダイマーが配向を明らかにした。N末端での位置の異なるBpa-G22とBpa-G21にアダマンタンを導入したG23ペプチドと、C23にシクロデキストリンを導入したペプチドとのヘテロダイマーが、非回文配列のCE/CRに結合することを、ゲルシフトアッセイにより確認した。切断反応はBpa-G21AdあるいはBpa-G22AdとC23Cdの2つのペプチド存在下で、0℃で302nmの紫外線を1時間あるいは2時間照射したあとで、中性の条件下で90℃、15分処理し、その後90℃、30分ピペリジンで処理した。切断の位置は非回文配列CE/CRの、CR側内のTに相当することがわかった。即ち、紫外線照射により、Bpaのベンゾフェノンが励起してチミンと反応し、ピペリジンで処理することにより、DNAの切断が起きたと考えられる。また、Bpaの位置の異なるペプチドでDNAの切断に差が生じたことは、DNAに対するBpaの位置が重要であると考えられる。DNAの切断に用いたBpaは、フェニルアラニンの誘導体であるので、ペプチド内に導入することができる。よって、DNAと結合したペプチドの位置を知るための分子として、またそのペプチド内のアミノ酸残基とDNAとの位置関係を知るための分子として、今後利用できることがわかった。
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