研究概要 |
本年度はペプチド二量体の安定性および二量体形成が平衡反応であることが二量体ペプチドのDNA塩基配列認識にどのような影響を及ぼすかを解析した。ペプチド二量体の熱力学的安定性を変化させるために、ゲスト分子の種類の異なる5種類のプチド二量体を合成した。DNA結合ドメインとして転写因子GCN4のDNA結合領域由来の24残基のペプチドを共通に用い、そのC末端のシステインの側鎖にCd、そしてアダマンタン(Ad)などの各種ゲスト分子を導入した。これらのペプチド二量体を用いて、GCN4が特異的に認識するDNA配列に対する結合をゲルシフトアッセイにより定量的に評価したところ、二量体の安定性とペプチド二量体-DNA複合体の安定性は直線関係にはなく、安定なペプチド二量体-DNA複合体形成にはある値以上の二量体安定性が必要であることがわかった。次に、二量体形成が平衡反応であることが、ペプチド二量体のDNA塩基配列認識能にどのような影響を与えるかを検討した。このために、同一のDNA結合ペプチドを用いて、共有結合および非共有結合により二量体を形成する3種類のペプチド二量体を合成した。共有結合二量体ペプチドとして,ジヒドロフェナンスレン誘導体を介してGCN4のDNA結合領域由来のペプチドを二量化したペプチドを用い、非共有結合二量体ペプチドとして、CdペプチドおよびAdペプチドからなる二量体ペプチドと同一ペプチド内にCdおよびAdを有するAdCdペプチド2分子からなる二量体ペプチドを用いた。これらの二量体ペプチドの塩基配列選択性をゲルシフトアッセイによって定量的に比較することで、ペプチド二量体のDNA認識へのペプチド二量体の解離平衡の影響を解析したところ、二量体形成を非共有結合にすることで塩基配列認識の選択性が向上することが確認された。
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