研究概要 |
近年、特異なピロロイミノキノン構造を有する海洋アルカロイドが特殊な海綿や海鞘から単離されている。それらのアルカロイドの多くが抗腫瘍活性を示し、新規抗癌剤のリ-ド化合物として注目をあつめている。我々は、新規抗癌剤開発の基礎となる効率的で汎用性のあるピロロイミノキノン型アルカロイドの化学合成法の開発を目的として研究を行った。特に初年度は、骨格構築法の開発を目指して、最も基本的なピロロイミノキノン型アルカロイドであるマカルバミン類の合成に取り組み、4種のアルカロイド、マカルバミンA,D,I,Kの全合成に成功した。以下、その概要を示す。 大量合成可能な6-メトキシインドール(100gスケール)を出発原料として、マンニッヒ反応およびインドール窒素のシリル化により1-トリイソプロピルシリル-6-メトキシグラミンを合成した。ここで、我々が独自に開発したインドール環4位選択的リチオ化を鍵反応とする3、4位二置換インドール合成法(Tetrahedron1997,53,51-58)を利用して、(4-クロロ-6-メトキシ-3-インドリル)アセトニトリルを高収率で合成した。さらに、インドール窒素をメチル化後、3位側鎖を還元し4-クロロ-6-メトキシ-1-メチルトリプタミンヘ変換した。さらにベンザイン環化反応を利用して、目的の3環性ピロロ[4,3,2-de]キノリン骨格を構築した。その後、フレミ-塩でイミノキノンに酸化したのち、塩化アンモニウムまたはチラミン塩酸塩と反応させることによりマカルバミンA,Kの合成に成功した。6-メトキシインドールからの総収率はマカルバミンAが20%、Kが22%であった。詳細は省略するが、同様のルートでマカルバミンI,Dの全合成も行った。以上の合成ルートは短工程で汎用性があり、様々なピロロイミノキノンアルカロイドの合成に適用できると考えられる。 以上の結果は、第28回複素環化学討論会(静岡、1997年10月7〜9日)(要旨集p.44-47)において発表した。
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