1997年、エルニーニョの影響を受けた東南アジアの熱帯雨林は、長期間の森林火災に見舞われ、航空路の寸断と事故の頻発、煙害による疾病の発生により、我々の調査活動に大きな制約を与えた。さらに追い打ちを掛けるように、タイ国に始まった東南アジア諸国の経済的崩壊が、調査・採集活動に対する安全確保の困難さを生み出し、予定した活動を中止せざるを得ない状況になってしまった。幸い、1990年以降、毎年の様に採集してきた手持ちのサンプルが数多くあることから、今年度は、これらの化学成分の検索に集中的に取り組むことができた。例えば、マレーシア・サラワク州・ランビル国立公園産のダイダイイグチの化学成分が、Ergosterol peroxidを主成分とするほぼ同一の化学成分からなることが明らかになり、化学分類的に同一種であることを確認した。また、植物成分の検索は、化学生態学的興味から、Anonaceae(バンレイシ科)植物を中心に研究しているが、幾つかの新規生理活性化合物を含めて構造を明らかにすることができ、発表を準備している。現地における生理活性テストを含めて、来年度の現地調査に際して課題となる。
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