研究概要 |
(1)水素結合配置設計の可能性の提示:多くの超分子系の成功が報告されているがその多くは水溶液系ではなく、有機溶媒系である。それは、水溶液中では溶媒水の水素結合が存在するために設計通りに作用させることが難しく評価がままならないからである。申請者は「水」と「運動性=柔軟性」をkeywordsと確信し研究を進めてきた。申請者がこれまでの研究で基盤分子として用いてきたCDは疎水性相互作用のみ注目されてきたが、申請者は規則正しく並んだ多数の水酸基を水素結合テンプレートとして着目した。「動きのある修飾CD」を合成し、1)誘導適合類似挙動を伴う不斉分子認識(K.Takahashi,Chem.Lett(1990))、2)修飾基による誘導適合挙動の依存性と定量評価、3)包接疑似重合体形成(第9回CD国際シンポジウム・スペイン)、4)水分子クラスターの近接制御による酸-塩基平衡の移動、5)CDと単糖との不斉選択的集合体形成(Supramolecul.Chem.投稿中)を実現し、ミクロ疎水場であるCD空洞の近辺で水素結合の配置設計が可能である実例を示した。 (2)異種・同種の複数のCDの自己組織化の制御:研究成果(1)-2)の研究の進展に伴い、疎水性基として脂肪族化合物を修飾した.6-mono-N-tert-butoxycarbonylglycylamino-β-CDの修飾基が自らのCD空洞に包接されず、他のCD空洞に包接されることを発見した。類縁体をいくつか合成して構造解析を行った結果、Boc基が他のCD空洞に包接され線状分子集合体を形成することが判明した。また、未修飾CDを組み合わせてCD2量体、3量体を形成できることが判明した。(第16回・17回シクロデキストリンシンポジウムにて発表、第15回機能性ホスト・ゲスト研究会、日本化学会第76春季年会で発表、Polymer Journal in press)。異種のCDの自己組織化としてまず空洞の小さいCDと大きいCDにそれぞれ異なる修飾基を導入し、NMR分光法により常に大小2CDが集合し、通常のCD疎水性空間より強い疎水性を示すことや、溶媒添加により集合体が解離の傾向を示す結果も得た
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