研究概要 |
1.漢方方剤小青龍湯は、Epstein-Barr virus(EBV)の活性化抑制作用を指標とする一次スクリーニングにおいて、極めて顕著な抑制作用を示した。この方剤に特有の構成生薬、細辛について、各種クロマトグラフィーを用いて活性成分の単離を試みた。 2.単離された化合物の化学構造を、UV,IR,NMRなどのスペクトルデータから明らかとした。 3.各化合物について、同様のスクリーニングを行ったところ、2種のリグナン(asarinin及びxanthoxylol)に顕著なEBV活性化抑制作用が認められた。 4.2種にリグナンについて、TPAをプロモーターとするマウス皮膚二段階発癌抑制実験を実施し、いずれの化合物にもin vivoにおける抗発癌プロモーター作用が認められることを明らかとした。 5.主成分の一つであるasarininについて、4-NQOをイニシエーター、グリセリンをプロモーターとする、マウス肺二段階発癌抑制実験を行い、顕著な発癌抑制作用を明らかとした。 6.今回単離された活性成分は、いずれも脂溶性の高い化合物であるため、水による煎液として服用される漢方方剤に溶解され得るかどうかを検討し、小青龍湯煎液中にも相当量溶出され得ることを確認した。 以上の結果より、細辛に含有される、抗発癌プロモーター作用成分の一部がasarinin及びxanthoxhlolであり、マウス皮膚並びに肺発癌に対して顕著な発癌抑制効果を有することを明らかとし、発癌予防薬としての可能性を示唆した。今後、小青龍湯そのものの発癌抑制効果を検討すると共に、他の構成生薬についても詳細を検討し、発癌予防薬としての有用性を明らかとする予定である。
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