研究概要 |
ラット胎児大脳半球由来神経培養系の再現性は培養細胞数を減らすことで大幅に向上した.さらに,神経特異的染色(neurofilment antibody)とレーザー顕微鏡を組み合わせることで,神経突起伸展の定量的な評価法が確立でき,神経突起伸展物質の探索が迅速に行えるようになった.しかし,この改良した培養系を用いてアミロイドβ蛋白による神経細胞死系の新しい評価系の確立はできたが,日常的に活性化合物のスクリーニングまで至らなかった. 新規活性化合物探索としては,サンゴジュから分子内にエンドパーオキシを有する大環状構造からなる珍しいneovibsanin Gおよびおよびセンダン根から数種の新規リモノイド類が単離できた. 神経突起伸展活性物質の合成研究は順調に進み,当初予定していた活性化合物の合成に成功した.まず,大環状bisbibenzyl類プラジオチンA〜Dの合成研究は,Pd(O)触媒下Still-Kelly反応が鍵となる分子内ビアリール結合に有効であることを見いだし,その方法を適用することで,プラジオチンA〜Dの合成に初めて成功した.合成したブラジオチンAはラット胎児大脳半球由来神経培養系で1〜0.1μM濃度で神経突起伸展活性を示すことが確認できた.さらに,西洋ワサビ過酸化酵素(HRP)を使ったビアリールカップグ反応を検討した結果,コーヒー酸から単段階で神経突起伸展活性物質アメリカノールの合成に初めて成功した.また,同じ酸化法をヘルベルテンジオールに適用することで,その二量化にも成功し,もう一つの活性物質マステイオフィランAおよびBに高収率で誘導できた.今後,HRP酸化酵素反応を分子内でのビアリール結合に拡張することで,遷移金属触媒に代わるビアリール炭素-炭素結合形成の簡便な方法に展開したい,と考えている. 一方,植物組織培養の利用は予定通りに進んでいないが,今回ヒオーギのカルス化に成功した.目的とした1,4-ベンゾキノン類の産生は確認できており,現在,大量培養条件を検討している.
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