アポトーシス誘導型免疫抑制剤ISP-1はスフィンゴ脂質合成の初発の酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼを効果的に阻害し、細胞内のスフィンゴ脂質を減少させることにより細胞障害性T細胞株のアポトーシス誘導を引き起こしている。また、逆に、スフィンゴシンを加えることにより、細胞内のスフィンゴ脂質を増加させてもアポトーシスが起こることが明らかにされている。そこで細胞内のスフィンゴ脂質の増減によるアポトーシスの誘導機構を解明するために、既存のアポトーシスに関与していることが知られているICE-like protease、Bcl-2、Bcl-xなどの影響を調べることにより、スフィンゴ脂質が関与しているアポトーシス誘導機構の性質について明らかにした。スフィンゴシンもしくはISP-1を加えたCTLL-2細胞に、ICEインヒビターやCPP32インヒビターを加え、セルソーターによる分析や生存率等をもとにアポトーシスの程度を測定した。またBcl-2を強制発現させたCTLL-2細胞を用いて、スフィンゴシンやISP-1によるアポトーシスに対する影響を、同様の方法を用いて測定した。 その結果。スフィンゴシンによるアポトーシスはCPP32インヒビターによって阻害されたがICEインヒビターでは阻害されなかった。一方ISP-1によるアポトーシスは両インヒビターでは阻害されなかった。またBcl-2を強制発現させたCTLL-2細胞ではスフィンゴシンやISP-1によるアポトーシスは抑制された。これらの結果は両者のアポトーシスが一部共通しているものの異なった経路を介して起こることを示唆している。
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