我々のこれまでの研究により、アポトーシス誘導型免疫抑制剤ISP-1はスフィンゴ脂質合成の初発の酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼを効果的に阻害し、細胞内のスフィンゴ脂質を減少させることにより細胞障害性T細胞株のアポトーシス誘導を引き起こしている。また、予備的な実験から、アポトーシス誘導型免疫抑制物質ISP-1の酵母に対する致死作用を回避する機構に糖脂質が関与している可能性が示唆されている。そこで、本研究は、この細胞死抑制機構の解析を以下の点から進めた。 (1) 酵母の糖脂質を単離し、酵母に加え、ISP-1による細胞死誘導活性を阻害するかどうかを確かめることにより、活性を有する糖脂質の同定を行う。 (2) ISP-1耐性遺伝子をクローニングすることにより細胞死抑制シグナルに関与する遺伝子を明らかにする。そのためマルチコピー発現系に構築された酵母遺伝子ライブラリーを用い、これを酵母細胞にトランスフェクションしてISP-1耐性のコロニーを得、その遺伝子を回収する。 (3) 酵母に見られる糖脂質の関与した細胞死抑制シグナルと類似のシステムが哺乳動物にも存在している可能性が高い。そこで、酵母で得られた細胞死抑制シグナルに関与する遺伝子の哺乳動物でのホモログを単離することにより哺乳動物における細胞死抑制シグナルの解析を行う。以上の研究を通じて、アポトーシス誘導型免疫抑制剤ISP-1の哺乳動物に対する作用機構および、より強力な免疫抑制剤の開発を展望しようとしたものである。
|