研究概要 |
1. MAR結合タンパク質SP120の認識配列を明らかにするため,付着端が異なる22種類のユニット・オリゴマー(26塩基長で2つのATトラクトを含む)を組み合わせて36種類のオリゴ・コンカテマー(hexamer)を合成し,それぞれの精製SP120に対する結合親和性をフィルター結合法により比較した.しかし,期待したほどの結合活性の差は検出されず,結合活性と厳密な相関をもつATトラクトの配置パターン(バーコード)を特定することはできなかった.現在,SP120のDNA結合領域をもつGST融合タンパク質を調製し,新たな結合測定法を用いて解析をやり直している. 2. SP120と同様の機構でMARを認識すると思われるDNAトポイソメラーゼII(トポII)に関する研究を開始した.まず,トポIIアイソフォームβがin vivoで直接作用しているゲノム領域をクローン化する技術を開発し,この酵素の主要なターゲットはATトラクトに富む領域であり,トポIIβによる切断点はMAR内部か,その近傍2-3kbの非コード領域内にあることを証明した.現在,切断点周辺のATトラクトの配置パターンに法則性が見いだされることを期待して,複数のターゲット・クローンの塩基配列と切断点の解析を行っている. 3. ATトラクトの間隔に注目して十数種類のMARの塩基配列を調べると,約120bpにわたって特定の間隔で現れる4つのATトラクト(Aトラクト2つとTトラクト2つ)からなるモチーフが頻繁に出現することがわかった.いくつかの塩基配列について,このモチーフをコンピュータで検索することにより,かなりの確度でMARを予測できることがわかった.上記のオリゴ・コンカテマーの一部にもこのモチーフが存在することから,バーコードモデルはMAR一般についても成立する可能性が示唆された.
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