研究概要 |
1.MAR結合タンパク質SP120の認識配列を明らかにするため,SP120のDNA結合領域(N末端領域)をもつGST融合タンパク質を調製し,これをグルタチオン-セファロースに結合させたものを結合基質として用いる結合反応系を作製した.競合DNA存在下に末端ラベルしたDNA断片の特異的結合を測定した.既知のMARやトポII標的クローンに見出された新たなMARを用いて,この系が働くことを確認した.次に,156塩基長で12のATトラクトを含む36種類のオリゴ・コンカテマー(hexamer)を合成し,それぞれの結合親和性を比較したところ,poly(dA)・poly(dT)で強く競合されるというMARの特徴を示す数種類のコンカテマーが同定された.しかし,やはり結合活性と厳密な相関をもつATトラクトの配置パターン(バーコード)を特定することはできなかった. 2.DNAトポイソメラーゼIIのアイソフォームβ(トポIIβ)がin vivoで直接作用しているゲノム領域をクローン化し,多数のMARを含むクローンを得た.複数のターゲット・クローンの塩基配列を決定した結果,ATトラクトの配置パターンにある種の法則性が見いだされた.トポIIβはSP120と同様にATトラクトを認識するが,その配置パターンは異なることが示唆された. 3.天然のMAR内部に共通して見出される,約120bpにわたって特定の間隔で現れる4つのATトラクト(Aトラクト2つとTトラクト2つ)からなるモチーフ(MARモチーフと呼ぶ)を,市販の配列解析ソフトウェアのモチーフ検索機能を利用して,インプットした任意の塩基配列の中で検索するアルゴリズムを作った.この方法により,ヒトのβグロビン遺伝子座(約75kb)のMARを予測した.計17箇所のMAR候補領域を同定し,PCRクローニングで12箇所のクローンを得た.核マトリックスとの結合を調べると,11/12が強いMAR活性を示した.negative controlとした3つの領域にはMAR活性を検出しなかった.
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