研究概要 |
申請者らは、ラット肝臓細胞質画分から過塩素酸によって抽出される新規な蛋白質(過塩素酸可溶性蛋白質:PSP)を発見し、その一次構造とin vitroでの機能を明らかにしてきた。本蛋白質は、136個のアミノ酸から構成されており、分子量14,149 daltonと計算された。またホモロジー検索からPSP遺伝子は大腸菌からヒトに至る広範囲の生物種において高度に保存されており、PSPの細胞内における生理学的重要性が示唆されている。本研究は、PSPによる蛋白質合成阻害の生理的意義を明らかにする目的で、PSPの高次構造を検討することを目的とする。まず初年度はPSPの大腸菌における発現系の開発について検討した。精製組換えPSPの蛋白質合成阻害活性を、ウサギ網状赤血球の無細胞蛋白質合成系を用いて検討した結果、authentic PSPの蛋白質合成阻害活性より低いが、0.1μMのIC50を示した。次年度は、大量に得た精製PSP及び遺伝子組換えPSPを用いて、PSP蛋白質の結晶化を行い立体構造のX線解析を行った。精製PSPにポリエチレングリコールを滴下することによりサイズ0.5 mmサイズの8面体結晶が得られた。これらの結晶は、X線回折において2.4Åの分解能を示し、またESRF Grenobleでのbending magnet beamlineでは1.8Åの分解能を示した。結晶構造はunit cell parameter a=b=cが2.12Å3/Daを示すP2_13 cubic space groupに属していた。蛋白質の一部に結合させたプラチナの重原子解析によって得られた立体構造は、6個のβシ一ト構造に2個のαヘリックス構造が隣接した構造を示した。構造のホモロジー検索からsignal recognition particle receptor、chorismate mutaseならびにHsp70に相同性があることが示唆された。
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