グルコースは動物細胞の主要なエネルギー源であり、細胞膜に存在するグルコーストランスポーター(GLUT)により細胞内外のグルコースの濃度差に依存して細胞内へ輸送される。その細胞膜輸送の分子メカニズムを解明することは生命の基本現象を理解する上でも重要であり、またグルコース利用障害は糖尿病発症の原因となる。GLUTは分子量が約55kdの膜を12回貫通する糖タンパクで、グルコーストランスポーターには基本構造の非常に類似したものが6種類ファミリーとして存在する。その中でGLUT4と対比されるものはGLUT1である。GLUT4はインスリンのターゲット組織である筋肉、脂肪細胞に特異的に発現しており、通常は細胞内膜分画に存在するが、インスリン刺激により細胞表面上に移行し、グルコースを取り込む。一方GLUT1は全身の組織に比較的広く発現しており、合成されたGLUT1はほとんどが細胞内にとどまることなく直接細胞表面上に発現し、定常状態のグルコースの取り込みに関与していると考えられる。このように基本構造は非常に類似しているにも関わらず、GLUT4とGLUT1は全く細胞内局在とインスリン反応性が異なる。申請者らはGLUT4とGLUT1のcDNAの間でキメラを作り、細胞で発現させ、インスリン反応性を検討し、GLUT4のN末端領域、中央の細胞内ドメインにある大きなループ領域、C末端領域もいずれも細胞内にとどまることが明らかとなった。またインスリン反応性トランスロケーションはGLUT4のN末端半分があれば起こることが明らかとなった。
|