FITCラベルしたLPSを用いたflow cytometryによる解析の結果、固定したカブトガニ血球細胞はLPS応答性の哺乳類細胞と比較して非常に強いLPS結合能をもつことが明らかになった。細胞表面への結合にはhemolymph plasma成分は要求されず、過剰量の無標識LPSによって拮抗が見られた。さらにprotease処理によって結合の減少がみられることから、血球細胞表面に、LPSを直接特異的に認識し、結合するタンパク質性因子の存在が示唆された。この因子のcloningのため、カブトガニ血球細胞のcDNAを哺乳動物細胞上で発現させ、flow cytometryを用いてexpression cloningを進めたが、これまで、偽陽性シグナルしか得られていない。この因子が複数の遺伝子産物によって構成されている場合、あるいは、カブトガニ血球細胞特異的な翻訳後修飾を受けている場合、この方法ではcloningは困難であると考えられる。現在、血球細胞膜に対してmonoclonal抗体を作成しつつあり、脱顆粒阻害能、あるいは亢進能を指標にこの因子に対する抗体をスクリーニングすることを計画している。 また、これと並行して、哺乳動物細胞との反応性を比較するため、monocyte、macrophageのLPS受容体と考えられるCD14の発現を試みている。現在までに、C末端の細胞膜へのanchorに関与するpeptide部分を除去した可溶性のCD14の酵母の一種であるPichia pastorisを用いた発現に成功し、精製を行った。精製CD14は、CD14を発現していない哺乳動物細胞に対し、LPS応答反応を仲介することが示され、生物活性を保持していることが明らかになった。現在、さらに生物活性を保持したより短い型のCD14、N型糖鎖の結合部位に変異を導入したCD14などの発現を試みつつある。
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