洗浄したカブトガニ血球細胞を用いてLPS刺激を行い、顕微鏡下で観察したところ、顕著な脱顆粒反応が見られた。従って、この脱顆粒反応には血漿成分は必要でないことが明らかになった。この細胞はCa^<2+>イオノフォアによって脱顆粒が誘導されるが、EDTAを含む溶液中でも、LPS刺激にともなう脱顆粒反応が観察された。つまり、この脱顆粒反応には、細胞外からのCa^<2+>流入は必要でなく、細胞内Ca^<2+>プールからのCa^<2+>の放出によって惹起されることが示唆された。 次に、血球細胞表面のLPS結合能について、FITCあるいはbiotin標識したLPSを用いたflow cytometryによって解析した。結果、カブトガニ血球細胞は、LPS応答性の哺乳動物細胞と比較して非常に強いLPS結合能をもつことが明らかになった。この結合は、過剰量の無標識LPSによって拮抗がかかり、血球細胞をprotease処理することによって減少した。また、Salmonella minnesota R595株由来のLPSでも結合が見られた。以上の結果より、血球細胞表面に、LPSの生物活性の中心を担うlipid Aを直接特異的に認識し、結合するタンパク質性因子の存在が示唆された。 この因子のcDNA cloningのため、哺乳動物細胞を用いてexpression cloningを進めたが、これまで、偽陽性シグナルしか得られていない。現在、血球細胞膜に対してmonoclonal抗体を作成し、脱顆粒阻害能、あるいは亢進能を指標にこの因子に対する抗体をスクリーニングすることを試みつつある。現在までに、数種類の血球細胞膜に対するmonoclonal抗休が得られており、そのうち、いくつかは細胞表面のLPS結合を阻害することが明らかとなった。現在、この阻害が特異的なものが、さらに、脱顆粒反応に対しても阻害的に作用するかについて検討しつつある。
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