小胞体型膜タンパク質の典型としてチトクロームP450をとらえ、その合成・膜への組み込み・小胞体局在制御を含めた細胞内動態制御について以下の成果を挙げた。 【1】 P450の膜への結合に必須なI型シグナルアンカー配列(SA-I)が幅広くマルチスパン膜タンパク質の立体構造形成に機能していることが発見された。マルチスパン膜タンパク質(赤血球バンド3タンパク質)の組み込みにおいて、分子内の“SA-I"がそのアミノ末端側のセグメントを積極的に組み込むことが実証された。このモデルはいくつかの“SA-I"をもたせた人工モデルタンパク質の組み込み解析で詳細に実証された。 【2】 P450とシナプトタグミン2との組み換えモデルタンパク質による小胞体膜への組み込みに必要な構造を確定した。I型シグナルアンカー配列の疎水領域のアミノ末端にターン構造を誘導するアミノ酸残基が特異的に要求されることが判明した。 【3】 I型シグナルアンカー配列の疎水性領域による細胞内局在制御 系統的な疎水領域の部分的欠損および改変変異体をもちいた実験から、チトクロームP450のようなI型シグナルアンカータンパク質でも、その長さに応じて小胞体局在性が制御されていることが明らかになった。この小胞体局在性は主に、小胞体からの輸送搬出の速度と小胞体におけるタンパク質の安定性によって制御を受けていることが明らかとなった。 【4】 SA-Iの生合成時における組み込みのタイミングは、の疎水性配列がリボソームから出てくるとすぐであることを証明した。 【5】 NADPH-Cytochrome P450 reductaseがP450と同じくI型シグナルアンカー配列をもつことを明らかにした。
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