研究概要 |
平成9年度はゴルジ装置局在蛋白質GCP364,GCP170,GCP112の局在化機構を解明する目的で以下の実験をおこなった。1]GCP364について。GCP364 cDNAと、細胞膜蛋白質syntaxin2 cDNAを用いて作製した変異体cDNAをCOS-1細胞に導入し、解析し以下の結果を得た。1)GCP364膜ドメインを持ったsyntaxin2は弱いゴルジ局在化を示した。2)膜ドメインを欠失させたGCP364において、4個のcoiled-coilドメインのうちN末から4番目のもの(アミノ酸1765-3116)がゴルジ局在化に必須であった。3)4番目のcoiled-coilドメインのC末端側約1/3領域(アミノ酸2938-3116)のみでもゴルジ局在が見られた。さらにこの領域を欠失させるとゴルジ局在は観察されず小胞体への分布が観察された。これらの結果はGCP364のゴルジ局在化には、細胞質ドメインのアミノ酸2938-3116の領域が強く関与していることを示唆する 2]GCP170について。1)各種kinase阻害剤存在下でGCP170リン酸化を解析した結果、CKII阻害剤A-3処理でのみGCP170リン酸化型の顕著な減少が見られた。またA-3処理細胞では未処理細胞に比べてGCP170の細胞質への分布が増加していた。2)同調培養細胞を用いて、細胞周期の各段階におけるGCP170のリン酸化を解析したところ、M期にリン酸化型の消失が観察された。3)BFA処理したHeLa細胞を経時的に集め、リン酸化の程度を解析すると、処理時間と共にリン酸化型の減少が観察された。4)GCP170のhead,rod,tailの各ドメインを欠失させたコンストラクトを作製、細胞内分布を解析した結果、野生型とtail欠失GCP170のみがゴルジへの局在を示し、head欠失GCP170はゴルジ局在を示さなかった。またheadドメインが選択的に高度にリン酸化されることが示された。これらの結果からGCP170のゴルジ局在には選択的にリン酸化がおこるheadドメインが必須であり、ゴルジ装置が分断化されるM期およびBFA処理においてGCP170の脱リン酸化が起こり、GCP170の脱リン酸化とゴルジ装置の形態維持に関与している要素との関係が示唆される。 3]GCP112について。GCP112はスプライシングの違いで、N末近くに27アミノ酸欠損と138アミノ酸欠損した3種の分子種が存在する。HA-tagをこれらの変異種に導入螢光抗体法で観察したところ3種はすべてゴルジ装置に局在していた。さらに架橋剤DSPでHeLa細胞を処理、免疫沈降によりGCP112と相互関係を持つ蛋白質の検索をおこなった。その結果160kD,100kD,70kD,50kDおよび25kDの蛋白質が検出された。 以上の結果をふまえて、さらなるGCP364,GCP170,GCP112のゴルジ装置局在機構の解析をおこなっている。
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