神経芽腫細胞の中にはGM1オリゴ糖鎖に反応して神経突起を伸展するものがある。この反応は特異的受容体により仲介されると推測されるが、その生化学的実体は不明である。本研究は、この受容体の生化学的な解析とcDNAクローニングを目的とする。 本年度は、GM1オリゴ糖鎖を多価で含むプローブの大量合成を行った。GM1オリゴ糖鎖は、ウシ脳のGM1ガングリオシドよりオゾン分解-アルカリ処理法にて調製した。このオリゴ糖をストレプトアビジンと還元アミノ化法により結合した。1分子当たり15本の糖鎖の結合を確認した。合成されたGM1ストレプトアビジンの複数分子を架橋することにより"多価性糖鎖プローブ"を作製した。架橋分子としてはアルブミンに多数のビオチンを結合したものを使用した。10分子のGM1ストレプトアビジンが架橋され、150本の糖鎖を持つプローブが作製された。架橋反応に先立って、ビオチン化血清アルブミンを放射性ヨードでラベルしておきラベル化プローブを作製した。本プローブは糖鎖を多価で含有するのでマウス神経芽腫細胞へ高親和性で結合すると期待された。事実、本プローブに対し結合性を示す神経芽腫細胞が同定された。 来年度は、結合親和定数を決定し、その値に基づいてフォト・アフィニティーラベルを行う予定である。さらに、受容体がシングルペプチドからなる場合には発現クローニングを試みる。神経芽腫細胞のcDNAライブラリーを発現ベクターとともにCOS細胞にトランスフェクトする。受容体が陽性となったCOS細胞を放射性ヨードラベルされたGM1プローブを用いてスクリーニングする。受容体のメッセージ頻度は低いことが予想されるのでフィルム・エマルジョン法を用いた高感度の検出を行う。
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