研究概要 |
1。 TFPIのトロンビンによる分解 TFPIは血漿中では、遊離型のほか、LDLやHDLなどのリポタンパク質と結合して存在するが、さらに,種々のプロテアーゼの作用をうけた分解型も存在していることが示唆されている。我々は、これらの分解がどのようなプロテアーゼにより生成し、またその機能がどのように変化するのかを明らかにするために、ヒト組換え型TFPIに種々のプロテアーゼを作用させ、その分解形式を解析した。その結果、トロンビンはTFPIの3つのペプチド結合を切断することによりTFPIの抗凝固活性を失活させることを見いだした。 2。 TFPIとヘパリンの結合 TFPIとヘパリンの結合様式を解析するために、ヘパリンおよびその硫酸基を特異的に脱離したヘパリンとTFPIの結合を解析し、N位硫酸基>2位硫酸基>6位硫酸基の順に結合能は低下したが、解離定数には大きな差はなく、いずれの硫酸基もTFPIとの結合に関与していると考えられた。次に、ヘパリン少糖類を調製し、ヘパリン2,4糖もTFPIに結合するが、さらに6-8糖に鎖長が延びるにつれ強く結合し、14糖以上ではもとのTFPIと同じ結合の強さを示した。TFPIには2つのヘパリン結合部位、K3ドメインとC末端側塩基性ペプチド、が存在するので、これらの部位とヘパリンの結合を別々に解析した。 C末端側塩基性部分(HBS-1)との結合にはArg257とArg259が最も重要であることが明らかとなった。K3領域(HBS-2)とヘパリンの結合を解析するために、カイコを用いるK3の発現系を構築し、その体液より。K3組換え体を調製した。このようにして調製したK3組換え体を用いて、ヘパリンおよび修飾ヘパリンとの結合の強さを解析し、ヘパリンのN位、6位および2位の硫酸基もいずれもほぼ同等の寄与を示すことを明らかにした。
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