ArntはAhリセプターとヘテロダイマーを形成し、ダイオキシンやメチルコランスレンなどの外来異物によって活性化される転写因子である。またこの複合体は外来異物で誘導される遺伝子の上流に存在するXRE(Xenobiotic Responsive Element)に結合し、転写を活性化する。 アデノウイルスの初期遺伝子の産物である、E1Aはこの転写活性化を強く阻害することは既に分かっていたが、その阻害機構は不明のままであった。最近一般的にその阻害がCBP/p300の作用を阻害することが示唆された。このことはAhリセプター/Arntによる転写活性化が、CBP/p300によって仲介されることを示唆する。そこでArntのC末端に存在する転写活性化ドメインと、CBP/p300のタンパクータンパク相互作用をイーストと培養細胞のツーハイブリッドシステムで調べたところ果たして相互作用することが分かった。しかしながらAhリセプターの転写活性化ドメインは、CBP/p300と相互作用しなかった。種々の欠失ミュータントをつくって相互作用に必要な領域を調べたところCBP/p300のArntと相互作用する領域はCREB-bindingドメインであった。また、この相互作用は細胞内でも起こっていることを証明した。Ahリセプターの転写活性化ドメインはなぜCBP/p300と相互作用しないのに、E1Aで阻害されるのか、別のファクターが存在するのか、検討中である。またArntはAhリセプター以外にSimなどのPASタンパク質と複合体を作るが、そこにCBP/p300が関与するかどうかも検討中である。
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