ラット胸腺を研究材料に、種々のイソプレノイド化合物によるアポトーシス誘導能を調べてきた。この研究を進展させるために行った今年度の成果を以下に示す。鎖長C15のファルネソ-ルとC20のゲラニルゲラニオールにおいて顕著な誘導能がそれぞれ25μMと15μMの濃度でみられた。胸腺細胞では自発的なアポトーシス極力おさえる為に、作用させる時間において振蕩せずに静置させることが必要であった。HMGCoA還元酵素阻害剤のコンパクチンは、胸腺細胞のアポトーシス誘導能を示さないが、ファルネソ-ル共存下ではより顕著な促進を示した。これらの化合物の胸腺への取り込みとその代謝を理解するために、放射性のファルネソ-ルとゲラニルゲラニオールを用いて、とりこまれるプレニル化蛋白質の分析をSDSポリアクリルアミド電気泳動法によって調べた。ファルネソ-ルの蛋白質への取り込みは低く、ゲラニルゲラニオールは相対的に21kDaから28kDaへの蛋白質に主に取り込まれた。化合物の膜透過を考慮し、ゲラニルゲラニオール、ゲラニルゲラニルモノリン酸、そしてゲラニルゲラニルジリン酸を用いて比較したところ、同様の蛋白質へのゲラニルゲラニルモノリン酸による取り込みが最も高いことが判明した。またコンパクチン存在下での放射性メバロン酸とゲラニルゲラニオールの取り込み研究では、およそ22kDaの相当する蛋白質への集中した取り込みが観察された。今後これらの放射性蛋白質がプレニル化蛋白質であるのか、どのような蛋白質が特異的に脂質修飾を受けるのか、そしてそれらの蛋白質とアポトーシスがイソプレノイド化合物をとうしてどのように関連しているのかに焦点を当てて追究していく予定である。
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