研究概要 |
ホスファチジルイノシトール(PI)は、生体膜を構成するリン脂質の必須成分の一つである。またこの物質のリン酸化により合成されるポリホスホイノシチドが細胞内情報伝達系に中心的役割を演じていることからもこの脂質の合成及びその調節機構の解析は細胞生物学の研究に重要である。PI合成酵素(PIS)は、CDP-ジアシルグリセロールとミオイノシトールからPIを合成する反応を触媒する酵素であり、イノシトールリン脂質合成の初発段階に関与する酵素であるにもかかわらず、動物の酵素の構造・発現については全く不明であった。申請者は、酵母変異株を用いた発現クローニング法により最近ラット脳PISのcDNAクローニングに成功した。 本研究ではノーザン分析によりラットでは腎臓と脳にPIS遺伝子が高発現していることを見つけたので、ラットの中枢神経系に焦点を絞りその発現の解析を更に詳しくを行った。成熟ラットの中枢神経系におけるPISmRNA分布をイン・サイトハイブリダイゼーション法で調べたところ、Olfactory bulb,Cerebellum,Hippocampus,Dorsal root ganglionに特に多く検出された。次にこれらの組織での発生過程でのPIS発現をRT-PCR法で解析した。その結果、これら4つの領域での発現パターンは類似性を示し、出生後直ちに遺伝子の著しい発見上昇が起こり、生後7-14日でピークに達してから以後次第に減少する傾向が観察された。
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