研究概要 |
(i) pHY300PLK(大腸菌と枯草菌とのシャトルベクター)の薬剤耐性マーカーをテトラサイクリン耐性遺伝子からエリスロマイシン耐性遺伝子に置換したプラスミド(pHEex)にntpプロモーター領域約600bpを導入し、さらにその下流にレポーターとしてChloramphenicol acetyltransferase(CAT)遺伝子を挿入した(pHE-CATl)。CAT活性を指標に、NaCl及びLiCl濃度の影響を調べた結果、オペロンプロモーター活性はNa^+に対して選択的に促進を受け、Li^+には応答しないことがわかった。さらにプロモーター領域のパリンドローム構造付近がNa^+応答に重要であることも明らかにした。本酵素Na^+-ATPaseは共役イオンとしてのNa^+,Li^+に対する特異性には相違がないが、イオンセンサーの特異性はそれとは明確にと異なっていた。オペロン発現のNa^+選択性は、本ポンプが毒性イオンの排出解毒作用として機能するのではなく、エネルギー共役イオンとしてのNa^+濃度勾配の形成にあることを示唆している。 (ii) Na^+排出活性の完全欠損株を用いて培地pHおよび細胞内pHのプロモーター活性への効果を調べた結果、Na^+だけではなく培地あるいは細胞内pHがアルカリ化する条件で顕著なプロモーター活性の上昇を観察した。本オペロンはNa^+だけではなくpHに対するセンサー感知系にも制御されていると推定される。 (iii) 通常本菌は約50mMLiClの添加により生育阻害がひき起こされるが、Na^+-ATPaseが誘導されている場合は同条件で生育可能であった。この結果に基づき生育阻害をひき起こすLiCl存在下生育可能なLi^+耐性株を多数単離した。この中に発現調節変異株が含まれている可能が極めて高い。
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